一緒に時計を選ぶとしよう。僕のおすすめを言う前に、いくつかの情報が必要だ。
僕が“仕事”をするなかで、こういう質問を受けるのが最も厄介だ。「私は〇〇万円もっていますが、この金額でどの時計を買うべきですか?」 こう聞かれるのは本当に困る。問題は質問そのものではない。時計についての消費者向けアドバイスを求めている人にとっては全く妥当な質問だ。セイコー問題は答えにある。なぜなら僕の答えはいつも「どの時計を買えばいいかは言えません」というものだからだ。これではまったく満足できないだろう。
役に立ちたくないわけではない。だが、実際に役に立てるとは思えないのだ。
なぜなら、時計を選ぶということは、あなたの内面が教えるさまざまな情報に左右される(あるいはされるべき)からだ。あなたの好み、こだわり、個人的なスタイル、市場に関する知識、予算、手首のサイズ、期待値、個人の所有歴などが関わる。あなたのことをよく知らない限り、僕はこれらの要素のうち2つ(予算と市場での入手可能性)についてのみ、実行可能で明晰なものを示すことしかできない。残りの要素についてはまったく不透明だ。僕の回答は事実上、あてずっぽうとなり、多くの場合、誰でも知っている時計を提案するような安全な回答になってしまう。
例えば、あなたが僕に次のようなDMをくれたとしよう。「ダイバーズウォッチに使えるお金が4万円あります。何を買えばいいですか?」 あなたの夢や希望、体格や資産についてインタビューをしない限り、僕はセイコーのSBDY015のような安全な賭けに出なければならない。厳密に言えば、答えにはなっているが「5万円以下で買える最良のダイバーズウォッチ」とググっても同じ答えが返ってくるだろう。Googleの答えが遅すぎて僕のところに来たのではないと思うが。
検索エンジンに質問をするときは、人間味のないストレートな答えを覚悟する。しかし、専門家と称される人に質問する場合は、より細やかなその人に合ったアドバイスを期待するだろう。僕はそういう答えを提供したいと思っている。特にあなたがお金を払うかもしれないのだから。
こういった質問を受けることが多いので、あなたが実際に気に入った時計を見つける可能性を高めるために、簡単なアドバイスをしたいと思う。もし、あなたが友人や家族の間で専門家としての役割を担うのであれば、誰かにアドバイスを求められた際にはこれで時間を節約できるかもしれない。
無数の選択肢がある市場では、予算と漠然としたリクエストのみを提示するのではなく、情報を提示する必要がある。価格も時計の種類も重要だが、どちらもピラミッドの底辺にあるブロックのようなもので、あなたが目指すべきは、選ぶ専門家が特定のポイントに到達するために十分な情報のブロックを与えることだ。僕に相談してくれるなら、一緒にこのピラミッドを作り、アルゴリズムが提案するような一般的で無難な時計から進んで、あなたのレーダーにかかっていなかったかもしれない時計、具体的で明確な1本に到達できるようにしたい。
次のレベルのブロックは、好き嫌いを把握することで配置される。これには、自分が欲しいサイズの概念(だいたい、こんな感じの、で構わない)や、絶対に必要だったり絶対に避けたかったりするデザインや機能面が含まれる。例えば、ブランド、セラミックベゼル、4時半位置の日付、手巻きと自動巻き、callerとflyerのGMT(callerとflyerについては記事「トラベルウォッチの長所・短所をタイプ別に解説」を参照)、微調整機能付きのブレスレットなどだ。
その上で、時計を購入する際の方程式のなかで大きな部分を占める期待とニーズの両方を考慮する必要がある。自分のライフスタイルに本当に合った時計を選ぶ際には特に重要だ。非常に荒っぽい使い方をする人にチタンはおすすめできない。逆に、着け心地の良さや金属アレルギーを気にする人には、とても良いだろうと言うと思う。ここでは、こだわりとわがままを言っていいのだ。
关键词
最後に、あなたがすでに愛用している時計を一つでも挙げることができれば、それも素晴らしいデータになる。ヴィンテージウォッチを現代的に表現したものをお探しだろうか? 教えてほしい。仕事のために特定の機能があるものを探しているのだろうか? それにも対応できると思う。初心者の友人が時計の購入について相談してきたとき、僕はたくさんの質問をする。どんなときに使うのか? 時間を見る以外の機能が欲しいか? 愛好家好きのもの(機械式)がいいのか、扱いが簡単なもの(クォーツ)がいいのか。早くも僕に相談したことを後悔しているのか? 僕のメッセージを既読スルーするのはなぜか?
具体性はストーリーの魂だと言われているので、ストーリーを教えてほしいのだ。詳細な質問が、詳細な回答に直結する。「最高のダイバーズウォッチを買いたいのですが」という質問にはフラストレーションが溜まるが、あなたが本当に好きな時計を見つけるお手伝いができれば、僕は心から嬉しく思うのだ。結局のところ、時計を愛する人がいなければ、僕の仕事もなくなってしまうのだから。
あなたのお手伝いをさせてほしい。